近年、契約社員などの非正規社員を正社員に登用する動きがあります。

企業も生き残るために人材を確保する必要に迫られているからです。

ただ、それは一部の大企業に限られます。

業務内容は変わらないのに、採用される段階で生まれてしまった正社員と契約社員などの非正規社員との格差は、もはや人事制度だけでは埋まらないところまで広がってしまいました。

国は、老後の資金を年金で賄うことはできないと実質的に認めました。

国のモデルは、企業の正社員の家庭をモデルにしているため、事態は私たちが思う以上に深刻です。

今回は、正社員と契約社員などの非正規社員との間にある格差をしっかりと認識してもらうことで、これからの時代を生き残る術を考えるきっかけにしていただければ幸いです。

給与面での格差

まず、正社員と契約社員の定義から確認していきましょう(Wikipediaより引用)。

正社員とは、一般的には期間の定めのない労働契約で会社企業に雇われ、その企業の就業規則で定められた所定労働時間の上限(フルタイム)まで労働する者の事を言います。

契約社員とは、企業などと期間の定めのある労働契約(有期労働契約)を結んで職務に従事する労働者のことを言います。

なお、法律的に見ると「社員」という言葉は「株主」を意味するので、「従業員」という言葉を使うのが正しいのですが、ここでは一般的に通用している意味で「社員」という言葉を使います。

言葉だけを見れば「期間の定めのある・なし」だけの違いのように思えます。
そう見えてしまうのも当然です。

しかし、それは「言葉のマジック」でしかありません。

これから様々な数字を見ていただきます。
イメージとしてはあまり違いがないように見えても、数字にしてみるとその違いが明確にわかります。

やはり給与面で見ると、その違いは如実に出ます。
また、その他の福利厚生面で考えても、違いが出てきます。

その現実をこれから見ていきましょう。

給与格差

正社員と契約社員の給与面での格差は、平成20年代に既に明らかになっています。

厚生労働省「平成22年 就業形態の多様化に関する総合実態調査の概況」という資料には、次のようなデータが掲載されています。

基本給・通勤手当・時間外手当を含む1ヶ月の税込み給与は

金額(万円)正社員(%)正社員以外(%)
10未満0.235.4
10以上20未満14.343.3
20以上30未満36.612.2
30以上40未満25.54.1
40以上50未満13.61.8
50以上9.02.2
不明0.90.9

となっています。

これが平成26年になるとこのように変化しています。

金額(万円)正社員(%)正社員以外(%)
10未満0.236.7
10以上20未満14.941.5
20以上30未満33.712.9
30以上40未満26.83.3
40以上50未満13.61.6
50以上9.61.5
不明0.90.8

若干ではありますが、全体的に見ると正社員の給与は上がり、正社員以外の給与は下がっています。

正社員以外にはパートタイムや派遣労働者も含まれているので、純粋な契約社員としての数字ではありませんが、実態を表すには十分です。

つまり、正社員以外の給与は、業務内容が同じ場合でも下がっており、企業にとって契約社員は業務により調整のしやすい就業形態であることが分かります。

その結果として、正社員と正社員以外では、平均すると少なくとも10万円以上は給与に差が出ていることがわかります。

正社員以外のピークが「10万円未満」「10万円以上20万円未満」にあるのに対し、正社員のピークは「20万円以上30万円未満」「30万円以上40万円未満」にあります。

その差が「10万円以上」というのも納得いただけることでしょう。

念のために申し上げておきますが、これらの数字は「社員の能力」とは全く関係がありません。

「なぜあの人がそんなに給料をもらっているの!?」
という人が、どの職場にも必ずいます。

あなたにも、思い当たる人がいるのではありませんか?

能力がなくても、一旦正社員としてその役職になってしまえば、給料は上がるのです。
会社の都合によらない限り、決して給料は下がりません。

納得できるかどうかではなく、それが現実です。

年齢別格差

次に、年齢による格差についてご覧いただきます。

データは厚生労働省「平成30年 賃金構造基本統計調査」からの引用です。

年齢(歳)正社員(千円)正社員以外(千円)
20〜24213.2182.1
25〜29245.7198.2
30〜34282.4204.9
35〜39313.3207.7
40〜44342.1205.6
45〜49372.8206.1
50〜54400.0204.3
55〜59400.2206.2

正社員は、50代で約40万円となるまで右肩上がりに給与は上がっていきます。

一方、正社員以外は、30代で約21万円となってからは頭打ちになり、50代になると約2倍の開きになります。
この給与の開きは当然賞与にも反映します。

その意味がおわかりになりますか?

そうです。
同じ会社で働いているのに、正社員か正社員以外かの違いが、生涯の収入に大きく影響するのです。

あなたが、会社の給与以外に副業などをして収入を得ているなら話は別です。
給与以外に収入を得る道をいくつも確保することができれば、自然と格差は縮まるからです。

もし、会社からの給与以外に収入を得る道を作っていなければ、どうなるでしょうか。

考えなくてもすぐに分かることでしょう。
格差は開く一方になります。

福利厚生の格差

格差が出るのは給与だけではありません。

福利厚生の面でも、正社員と正社員以外では看過できない大きな格差があります。

福利厚生の定義を改めてみてみましょう(Wikipediaより引用)。

福利厚生(ふくりこうせい、employee benefits)とは、企業が従業員に対して通常の賃金・給与にプラスして支給する非金銭報酬である。

福利厚生には、「法定福利費」と「法定外企業厚生費」があります。

法定福利費

法定福利費とは、健康保険・介護保険、厚生年金等社会保険料の企業負担、年次有給休暇、育児休暇などのことを指します。

正社員でも契約社員でも、同じ時間・期間で働いている場合には、同じように適用される(ことになっています)。

大企業の多くでは、正社員と契約社員の格差がないように実施されています。

一方、一部の大企業や中小企業では、契約社員に対して有給休暇を認めない、育児休暇の制度がないという事例もあります。

「有給休暇がとれない」
一体いつ休むのでしょうか。
休日出勤をしなければいけない状況であれば、休みなどないに等しいのです。

「育児休暇がない」
いくら人手が足りないと言っても、妊産婦さんに負担をかけるのは問題です。

日本企業の90%以上は中小企業です。
中小企業で働く女性が結婚しても、子供を持つことをためらってしまう。
妊娠したら会社を辞めなければならなくなるからです。

そんな状況で、少子化が改善することはありえません。

中小企業であっても、女性が安心して出産・育児のできる体制を整えてはじめて、少子化が改善するのではないでしょうか。

また、金銭的負担から逃れるために、労働時間を短縮させて社会保険に加入できなくさせている企業もあります。
これは論外です。

確かに、社会保険の負担は、企業にとって死活問題になり得ることです。
しかし、社会保険の負担を考える前に、自社の仕組みで余計な経費がかかっているところはないか、一度見直すべきです。

ますは、会社自身が仕組みを改善することから始めなければ、優秀な社員を確保することなどできません。

こうしたところでも格差は広がっています。

法定外企業厚生費

法定外企業厚生費とは、法定福利費以外に、企業が独自の福利厚生制度を設けるために使われる費用のことを指します。

住居手当、精勤手当、早出勤務手当、交通費、社員旅行、同好会費など、各種手当・助成金のことです。

一部の大企業では、格差是正のために独自の福利厚生制度を設けています。

しかし、多くの大企業や中小企業では、金銭的負担の大きさから正社員に限られています。

「同一労働同一賃金」の考えも徐々に浸透し始めていますが、まだまだ企業に定着するには至っていません。

社会的信用の格差

意外なところにある格差として「社会的信用の格差」があります。

例えば、家やマンションを買おうとして住宅ローンの審査を受けることになりました。

正社員であれば、年収の条件を充たし、信用情報に傷がついていない状態であれば、審査はほぼ通ります。

一方、契約社員は、正社員以上の給与を取っていても、信用情報に全く傷がついていなくても、間違いなく審査は通らないでしょう。

それだけ「正社員」という肩書には信用があります。

逆に言えば、正社員以外の肩書には信用がないことになります。

言い方を変えれば、金融機関が貸付をする際には、こうした条件面で判断するしかないということです。

コロナ禍で現実味

2020年、全世界に大きな影響を与えた新型コロナウイルス。

日本でも緊急事態宣言が発令され、約2ヶ月間、社会の動きが停滞しました。

個人に対しては、外出自粛が求められました。

企業に対しては、営業自粛や最小限の人員での運営が求められました。

特に、店舗を介してお客様に来ていただく必要のある業種

サービス業
飲食業
娯楽業

などは、経営面で厳しい局面に立たされています。

なぜなら、日々の売上が運転資金になっている業種が多いからです。

特に中小零細企業や、個人成りの1人会社では更に状況は厳しいものがあります。

働けないのですから、当然給料が支払われるわけがありません。

個人事業主であれば、その間の収入が絶たれます。

結果として、生活を営むことさえも難しくなっている人が多くなっています。

コロナ禍による緊急融資に申し込む企業が、役所に殺到しています。

給料がもらえない会社員、収入がない個人事業主も、特別融資に殺到しています。

では、大企業なら大丈夫なのか。

そんなことはありません。

大企業であっても、資金繰りが一時的に悪化することは間違いありません。

すると、取引銀行に融資を追加してもらうことになります。

ただ、それが人件費まで回ってくるのかは、その会社の状況によって異なります。

ですから、大企業の正社員であっても決して安泰ではありません。

契約社員や派遣社員は、状況によっては契約を打ち切られます。

そういう意味では、派遣元の会社も苦しい状況に追い込まれることもあります。

新型コロナウイルスによって、見えないところで、じわじわと影響が出始めているのです。

まとめ

正社員は、給与や福利厚生など様々な面で会社から守られています。

その代わり、人事異動や経営方針など会社に従わざるを得ず、大きなストレスを抱えることになります。

また、多くの企業では副業が認められていないので、給与所得以外にお金を稼ぐ道はありません。

しかし、時代は確実に変わっています。

日本屈指の企業でも、一歩間違えば明日倒産している、あるいは民事再生を申し立てる事になりかねません。

しかも、社員にはそれまで一切知らされることはなく、発表当日に知ることになります。

それが、日本企業のあり方でもあります。

正社員・契約社員に関係なく、万が一の時に備えることを怠ってはいけません。

あなたは今、何をして備えていますか?